金融市場NOW
2020年米大統領選(5)
民主党候補者確定で党の結束固めを目指す
2020年04月15日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
新型コロナウイルス感染拡大で国民の選挙への関心度低下を懸念
- 民主党大統領候補者はバイデン氏へ一本化。新型コロナウイルス感染拡大により国民の選挙への関心は低く、バイデン氏は難しい選挙戦を強いられている。
- バイデン氏に絞られたことは市場にとって安心材料。大統領選が市場の波乱要因となる可能性は低下。
感染拡大の中でバイデン氏に一本化
今秋に控える大統領選の民主党候補者選びは、サンダース氏が撤退を表明しバイデン氏に一本化されました。新型コロナウイルスの感染拡大による外出制限措置で、多くの州で予備選が延期されるなど混乱が続いていますが、これで8月17~20日に開かれる民主党大会でバイデン氏が指名されることが確実となりました。
表1:バイデン氏の主な公約
環境 | グリーンニューディール政策推進 |
---|---|
経済 | 最低賃金時給15$、所得税・法人税の最高税率引き上げ |
ヘルスケア | 民間保険併用の医療保険制度 |
移民 | 不法移民の市民権獲得への門戸開放 |
サンダース氏の公約:大学授業料無償化・学生ローン全額免除
⇒短期大学の無償化を公約にし、低所得層や中間層向けの学生ローンの一部免除検討などサンダース氏支持者へ歩み寄りも
民主党は結束できるか
バイデン氏は撤退したサンダース氏を称え、同氏の支持者を取り込み党の結束を図るため、大学授業料無償化や学生ローン免除などのやや左派的な政策にも一定の理解を示しています。どの程度公約に取り込まれるかは不明ですが、2016年大統領選のような党の分裂を避け、民主党一丸となって「打倒トランプ」を目指したいところです。
新型コロナウイルス感染拡大が続く中、米国は経済対策第1弾としてワクチン開発等、第2弾として個人への支援等、第3弾は米国史上最大規模となる総額2兆ドルを超える包括救済案を打ち出しています。議会は更に第4弾について与野党合同で審議を進めており、中小企業支援策や医療従事者や地方政府への支援策も検討されています。国にとっての非常事態にある今、大統領選挙の公約を打ち出しても、国民の注目度は低く、アピール不足は否めない状況にあるようです。民主党やバイデン氏にとっては非常に難しい選挙戦となっていることが想定されます。
第二次世界大戦以来の経済成長率の落ち込みか
再選を目指すトランプ大統領にとって、感染拡大による景気後退の長期化は避けたいと思われます。米国の4-6月期の実質GDP(国内総生産)は年率換算で-30%程度と第二次世界大戦時以来の景気減速となり、失業率も10%を超えるとの見通しです。一方で7-9月期のGDPは年率換算で+20%程度と劇的な回復が見込めるとの予測も出てきています。ただし、この見通しは5~6月に経済活動が通常の状態に戻ることが前提とされています。
市場の関心は景気回復のスピードへ
感染拡大が終息し早期に経済が正常化すれば、バイデン氏は国民へのアピール機会を得ることになります。ただし、現職が有利とされる状況で、同氏が勝つ可能性が高まるのは、感染終息の後ずれと景気低迷が長期化する場合であると見られます。トランプ大統領の支持率は3月中旬に上昇したものの、感染拡大に終息の兆しが見えないことから低下傾向にあります。
大企業への大幅な増税など急進的な政策のサンダースが撤退し、穏健派のバイデン氏に絞り込まれたことは市場にとって安心材料であり、どちらが勝っても波乱要因となる可能性は低いと思われます。今後の市場の関心は、感染拡大の終息を睨みながら、景気がどの程度速やかに回復するかに集まっていくと思われます。
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