金融市場NOW
積みあがった個人マネー 今後は減少か
2020年03月30日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
個人投資家の資金回帰が今後の焦点に
- 2019年12月末時点の家計金融資産残高が1,903兆円となり、過去最高となった。
- 2019年後半の堅調な株価を受けた株式や投資信託の時価増加が主な要因か。中長期的にはNISAやiDeCoの利用増加による株式や投資信託の残高増加が期待される。
- 新型コロナウイルス感染拡大による株価の低迷から、2020年3月の家計金融資産残高は大幅減少か。
日本銀行が四半期ごとに公表している資金循環統計(速報値)によると、2019年12月末時点の家計金融資産残高が1,903兆円となり、統計を開始した2005年以降で最高となりました(グラフ1)。株価が堅調に推移したことにより、保有株式や投資信託の時価が増加したことが、残高増加の主な要因とみられます(グラフ1)。
金融資産の内訳は、現金・預金の残高は約1,008兆円で家計金融資産残高全体の52.9%となっており、引き続き家計金融資産の大半を占めています。投資信託は前年比プラス10.9%の約74兆円、株式等は同プラス13.5%の約211兆円となりました。投資信託、株式等ともに前年同期を上回るのは5四半期ぶりとなっています。今後は、個人型確定拠出年金(iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)の利用増加により、株式や投資信託の残高増加を促すことが期待されます。NISAの口座数は2014年の開設以降増加傾向にあるものの(グラフ2)、実際稼働している口座数は全体の60%程度にとどまっており、NISA口座の稼働率向上が課題となりそうです。
年明け以降、新型コロナウイルスの世界的感染拡大による景気悪化懸念から株価は大幅に下落し、不安定な値動きが続いています(グラフ3)。2013年以降、アベノミクスを追い風に家計金融資産残高は増加傾向で推移してきましたが、2020年3月期の家計金融資産残高は、株式や投資信託の時価減や個人投資家の投資資金引上げなどを受け、大幅に減少する可能性がありそうです。今後、景気減速が予想される中、株式や投資信託への個人投資家の資金回帰にどの程度時間を要するのかが注目されそうです。
金融市場動向
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