金融市場NOW
連動性が高まる原油価格と米国株式市場
2020年03月17日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
産油国による供給過剰懸念から原油価格は不安定な動き
- OPECとロシアなどの非加盟国による閣僚級会合において、減産の継続交渉が決裂。サウジアラビアが増産に転じるとの思惑から、原油価格が大幅に下落。米国株式市場の大幅下落の一因にも。
- 主要産油国の増産にともなう価格競争の激化により、米国シェールは石油業界から淘汰される可能性も。
OPEC協調減産決裂で原油価格は大幅下落
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟国が6日に開かれた閣僚級会合において、3月末に期限を迎える減産の継続交渉が、ロシアの反対を受け決裂となりました。これまで減産に取り組む姿勢を見せていた世界最大級の産油国であるサウジアラビアが、今回の交渉決裂を機に協調姿勢からシェアを奪う増産姿勢に転換するとの思惑が広がったことから、原油の供給過剰懸念などから9日のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は、前週末(3月6日)比で約25%の大幅下落し、米国株式も前週末比で下落となりました(グラフ1)。
原油価格と連動性を高める米国株式市場
原油価格は主要産油国による生産拡大や米国におけるシェールオイル増産などを受けた世界的な供給過剰感などを受け、2014年に大きく下落しました。その後は、協調減産合意により供給過剰が解消され、近年では原油価格は比較的安定して推移してきました 。サウジアラビアはOPEC会合の後、4月より現在の水準から約2割増産すると表明しました。世界最大級の産油国の増産と新型コロナウイルスの感染拡大による需要低迷から、今後の原油価格はふたたび軟調な展開が予想されます。
かつては相関が見られなかった原油価格と米国株式は、2015年頃から値動きに連動性が見られています(グラフ1)。近年のシェールオイル開発の進展により、原油生産量が急増し米国はサウジアラビアやロシアを抜いて世界最大の産油国となったことから、原油安が米エネルギー関連企業に与える悪影響はかつてよりも大きく、エネルギー関連企業の業績悪化懸念が米国株式市場の大幅下落の一因となっているものと考えられます(グラフ2)。
供給過剰から石油業界に変化が現れる可能性も
今後、主要産油国の増産による供給過剰から原油価格の競争激化が進行した場合、油田に比べて掘削・生産コストが高い米国シェールは業界から淘汰されることが予想され、米国株式市場に与える影響も今後の懸念材料となりそうです。
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