金融市場NOW
新型肺炎感染拡大 過去のパンデミック時との株価比較
2020年02月28日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
SARSや新型インフルエンザでは7%~10%程度の調整
- 過去のパンデミック(世界的感染大流行)時には、米国株価は底打ちまで20~35営業日を要し、最大10%程度の下落。今回も既に株価はこれまで過去の例と同水準まで下落。
- PER比較では現在の株価は大幅下落後でも割高な水準にあり、底打ちにはまだ時間を要するか。
過去のパンデミックの例と比較
新型肺炎の世界規模への感染拡大に対する警戒感から直近の世界株式市場は下落し、米国株は連日の大幅下落に見舞われました。今回の株価下落について過去の2つのパンデミック<2003年SARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年新型インフルエンザ(H1N1インフル)>時の株価推移(発症報告の経緯が様々であるため、世界的ニュースとして米国株価に反映され始めたと仮定したタイミングから60営業日後のS&P500指数)と比較しました(グラフ1)。
-2003年SARSの場合-
2002年11月には発症の報告があったものの、2003年1月21日にアウトブレイク(感染症集団発生)の報告が英訳された段階で株価に反映され始めたと想定されます。株価は34営業日後(3月11日)まで下落傾向で推移し、-9.8%で底を打ちました。
-2009年新型インフルエンザの場合-
2009年4月にメキシコ・米国などで最初の感染が報告され、6月11日にWHO(世界保健機関)が感染状況の段階をパンデミックフェーズへと引き上げたタイミングで株価に反映され始めたと想定されます。株価は途中で反発したものの、その後下落し19営業日後(7月10日)に-7.1%で底を打ちました。
新型肺炎感染拡大では約10%の下落
昨年より中国武漢での発症が報告されていたものの、2020年1月20日にヒトからヒトへの感染の報告を受けて、世界的なニュースとして認知され、株価に反映され始めたと思われます。株価は27営業日後(2月27日)の終値で-10.3%となっています。過去のパンデミックの例では、株価に反映され始めた後、20~35営業日程度で底を打っており、時期や水準の面で過去の例を参考にすると、そろそろ底打ちのタイミングに来ているとも言えます。ただし、WHOは新型肺炎の感染拡大についての感染状況の段階を、「局地的流行でありパンデミックと呼ばない(2月25日現在)」としており、世界各国で感染者が確認され始めている中、今後パンデミック段階へとフェーズが引き上げられることが想定され、更なる株価の下落も予想されます。
割高ともとれる株価水準
割高度指標とされる株価収益率(予想PER)は、過去のパンデミック時に底入れした株価水準と比べ割高な水準にあり(グラフ2)、直近では17倍程度と2009年の新型インフルエンザ時に、株価が回復した際のPER水準と同程度にあります。直近の大幅な下落は、新型肺炎の感染拡大への警戒感によるリスク回避姿勢の高まりと同時に、過熱気味にあった市場の調整という側面もあるものと思われます。感染拡大が世界規模へ広がる初期段階と想定されることや、大幅下落後においても割高ともとれる株価水準を鑑みれば、今後更なる調整も想定され、底打ちにはしばらく時間を要すると思われます。
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