金融市場NOW
経常黒字増加 2年ぶり
2020年02月18日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
米中貿易摩擦による貿易収支の落ち込みをサービス収支が補う
- 2年ぶりに経常黒字額が前年比で増加となる。サービス収支の黒字化が貢献。
- かつては一定の相関がみられた経常黒字と為替相場も、近年では相関が見えにくい。
- 直近の為替相場は米中貿易協議の不透明感や新型肺炎の感染拡大懸念などを材料に円高米ドル安基調。
財務省が2月10日に発表した2019年の国際収支統計(速報)によると、日本が貿易や海外への投資などでどれだけ稼いだかを示す経常収支の黒字が20兆597億円となりました。黒字が前年比で増加するのは2年ぶりとなっています(グラフ1)。内訳を見ると、貿易収支の黒字が減少した一方で、輸送や旅行などを含むサービス収支の黒字が大きく増加したことが経常黒字の拡大につながりました。なお、サービス収支はデータを遡ることができる1996年以降で過去最高となっており、暦年ベースでは初めて黒字(1,758億円)となりました(グラフ2)。
サービス収支の拡大の主因は、旅行収支の増加です。2019年の旅行収支は、前年比プラス9.1%の2兆6,350億円で過去最大となりました。近年の訪日客数の増加にともなう、旺盛なインバウンド消費(訪日外客による日本国内における消費額)が、旅行収支の拡大に大きく貢献したものとみられます。
一方、貿易収支の黒字は前年比マイナス53.8%の5,536億円となりました。米中貿易摩擦による世界的な景気減速から、輸入の減少(前年比マイナス5.6%)以上に輸出の減少(同マイナス6.3%)が大きかったことが、貿易収支のマイナスをもたらしました。国別でみると、中国、韓国、香港などのアジア諸国・地域向けの輸出額の落ち込みが目立っています。
かつては経常収支の支えは、貿易収支(輸出-輸入)が中心となっていました。『経常収支が黒字なら円高ドル安になる』が定説と言われ、経常黒字と為替に一定の相関がみられました。
しかし近年では、経常収支と為替の相関が見えにくくなっています。直近の為替相場は、米中貿易協議の不透明感が継続していたことや、中国で発生した新型肺炎の感染拡大懸念等を受けた投資家のリスク回避姿勢の高まりなどから、相対的に安全資産とされる円の買いが優勢で円高ドル安が続いています。当面は、マーケットを取り巻くこれらのリスク要因が為替相場に影響を与えそうです。
金融市場動向
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