金融市場NOW
景況感指標の悪化を受け利下げ織り込みが進む米国
2019年06月27日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
景況感を示す経済指標は市場予想を下回る結果が相次ぐ
- FOMCが堅調な経済成長見通しを示す中、市場では7月利下げを織り込む動きが進んでいる。景況感を示す経済指標は7月利下げの可能性を裏付けるような結果が相次いでいる。
- 今後の経済指標が上下に振れる結果となれば、利下げを巡って市場は上下に振れやすい展開も。
FOMCの堅調な経済成長見通し
6月18~19日に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場が利下げ期待を織り込む動きがある中で政策金利の現状維持が決定されました。公表された経済見通しでは、2019年実質GDP(国内総生産)は、前回(3月)見通しから変更されず比較的堅調であり、2020年見通しは上方修正されました(表1)。また、実績値においても2019年1月~3月期の実質GDPは+3.1%(前期比年率換算)<改定値>と堅調です。直近のアトランタ連銀が算出する2019年4~6月期実質GDPの短期予測<6月18日時点>は、+2.0%(同)と大きな経済成長の減速は見られません。
表1:6月のFOMC経済見通し
2019年 | 2020年 | 2021年 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
(差異) | (差異) | (差異) | |||||
実質GDP | 今回 6月 | +2.1% | 0.0 | +2.0% | 0.1 | +1.8% | 0.0 |
前回 3月 | +2.1% | - | +1.9% | - | +1.8% | - | |
失業率 | 今回 6月 | 3.6% | -0.1 | 3.7% | -0.1 | 3.8% | -0.1 |
前回 3月 | 3.7% | - | 3.8% | - | 3.9% | - | |
インフレ率 | 今回 6月 | +1.5% | -0.3 | +1.9% | -0.1 | +2.0% | 0.0 |
前回 3月 | +1.8% | - | +2.0% | - | +2.0% | - | |
コアインフレ率 | 今回 6月 | +1.8% | -0.2 | +1.9% | -0.1 | +2.0% | 0.0 |
前回 3月 | +2.0% | - | +2.0% | - | +2.0% | - |
このような経済環境下においても、市場では7月FOMC開催時の利下げ確率(金利先物市場の状況から利下げ確率を算出)が100%となっています。5月以降の米中貿易摩擦激化を受けた先行き不透明感による景況感を示す経済指標の悪化が背景にあると思われます。
6月24日に公表されたテキサス州製造業の活動を示す6月ダラス連銀製造業活動指数は、-12.1と3年ぶりの低水準まで落ち込みました。設備投資項目の低下幅が大きく、全米屈指とされる製造業集積地:テキサス州製造業の減速が顕著となりました。また17日の6月ニューヨーク連銀製造業景気指数や20日の6月フィラデルフィア連銀製造業景況指数も市場予想を下回る結果となっており、米国製造業の景況感悪化を確認できる経済指標の公表が相次いでいます(グラフ1)。
消費者心理は足元悪化か
6月28日から始まるG20大阪サミット開催時に予定されている米中首脳会談では、対中国追加関税第4弾(米国が中国から輸入する約3,000億ドル相当の全製品に対する追加関税)の発動可否が注目されそうです。一連の関税政策は価格押し上げなどによる消費者への影響が危惧されていましたが、6月14日に公表された5月小売り売上高は幅広い項目で増加し、個人消費の堅調さが示されました。
一方で、6月25日に公表された消費者心理を指数化した6月コンファレンスボード消費者信頼感指数は121.5と市場予想(131.0)を下回りました。通商政策への先行き不透明感が、消費者心理に影響したと考えられます。7月30~31日のFOMCにおける利下げの可能性を裏付けるような経済指標の結果に、市場は利下げ織り込みを進めているものと思われます。しかし、7月末までに公表される消費者心理や製造業の景況感を示す経済指標などが上下に振れる結果となった場合には、FOMCの利下げ判断へ影響することが想定されます。利下げを巡る憶測などから、市場が上下に振れやすくなることには注意が必要と思われます。
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