金融市場NOW
欧州委員会がユーロ圏経済見通しを引き下げ
2019年05月13日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ユーロ圏経済の下振れリスクは依然として大きいと警告
- 欧州委員会は5月7日の四半期経済見通しで、2019年、20年の経済成長率予想を下方修正。貿易と政策の不確実性が高まれば減速がより長期化すると予想。
- ユーロ圏主要国の金利は足元横ばい状態となっているが、米中貿易摩擦の過熱化等により不確実性が高まれば、ユーロ圏経済の下振れリスクが顕在化し、金利に低下圧力が加わる可能性も。
(1)2019年の成長率を1.2%増に下方修正
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5月7日に公表した四半期経済見通しで、ユーロ圏(注)の2019年の経済成長率見通しを前年比1.2%増と前回(2019年2月)から0.1%下方修正しました。2020年は1.5%増と前回から0.1%引き下げたものの、2019年から回復するとの予想は維持しました。ユーロ圏経済の約3割(2018年)を占めるドイツの2019年の成長率については、自動車産業の不振等を背景に前回から0.6%下方修正し、0.5%増としました(表1)。消費者物価は、2019年、20年とも前年比1.4%で推移すると予想し、欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%に近いかこの水準を下回り続けるとの見方を示しました。
- EUに加盟する国のうち、欧州経済通貨同盟に加わり、欧州統一通貨ユーロを採用している19ヵ国で構成される経済圏
尚、欧州委員会は、今回の予想は貿易と政策の不確実性が後退するか、少なくとも悪化しないとの前提に基づいたものであり、前提から逸脱すれば減速がより長期化するとしています。欧州委員会は見通し報告の中で、米中貿易交渉や英国のEU離脱問題、EUと米国の通商交渉等、様々な不確実性が立ちはだかっており、ユーロ圏経済の下振れリスクは依然として大きいと警告しました。
表1:欧州委員会のユーロ圏経済成長率予想
2019年経済成長率 | 2020年経済成長率 | |||
---|---|---|---|---|
前回2019年2月 | 今回2019年5月 | 前回2019年2月 | 今回2019年5月 | |
ユーロ圏 | 1.3 | 1.2 | 1.6 | 1.5 |
ドイツ | 1.1 | 0.5 | 1.7 | 1.5 |
フランス | 1.3 | 1.3 | 1.5 | 1.5 |
イタリア | 0.2 | 0.1 | 0.8 | 0.7 |
スペイン | 2.1 | 2.1 | 1.9 | 1.9 |
オランダ | 1.7 | 1.6 | 1.7 | 1.6 |
(2)貿易摩擦の過熱化等で金利低下が進む可能性も
2019年1~3月期ユーロ圏実質GDP(国内総生産)(速報値)が前期比年率1.5%増と前期の同0.9%増を上回り、また4月のIHSマークイット製造業PMI(購買担当者景気指数)が反発する(グラフ1)等、一部のユーロ圏経済指標には持ち直しの動きが見られます。その背景には米中貿易協議の進展による中国経済の底打ち期待等があるものと思われます。その貿易協議ですが、再び過熱化の様相を呈し始めています。
2018年10月頃を直前ピークに低下基調入りしたドイツ等ユーロ圏主要国の10年国債金利ですが、景気回復期待等を背景に足元は横ばい状態となっています(グラフ2)。不確実性が高まれば、欧州委員会の警告の通り、ユーロ圏経済の下振れリスクが顕在化することも考えられ、ECBの利下げ期待の台頭等により、金利に低下圧力が加わる可能性もあります。
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