金融市場NOW
FOMC議事要旨 利上げへの見方分かれる
2019年02月26日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
バランスシート縮小停止は年内終了で意見一致
- FOMC議事要旨において今年の経済成長は昨年からスローダウンするとの見通しなどが公表される。
- 保有資産の縮小終了時期では、参加者のほぼ全員が年内に終了する見通しを示した一方で、利上げ政策へのスタンスは意見が分かれていたことが判明。
利上げスタンスへの意見分かれる
FRB(米連邦準備制度委員会)は2月20日に1月のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事要旨を公表しました。直近の経済状況と見通しでは、経済は底堅く成長しており、雇用環境は堅調であることが確認されました。ただし、2019年のGDP(国内総生産)の成長率は2018年と比較してスローダウンすると見ており、その背景としては、ここ数か月の消費者心理の悪化や企業景況感の停滞、海外の経済成長見通しの引き下げなどがあげられました。具体的には欧州や中国を含む諸外国の景況感の悪化懸念や米中などの通商政策問題、各国の景気刺激策の効果減退、米国の一部政府機関の閉鎖などが言及されました。米国の雇用環境は堅調であるとされ、企業のコストが上昇しているにも変わらず、ドル高や原油価格下落などの要因もあり、インフレ率は横ばいで推移しています。今年もインフレ圧力は高まらない状況が続く可能性も示されました。
利上げ政策については、参加者数人が「インフレ率がFOMCのベースとする予想を上回った場合のみ必要である」とし、また別の数人は「経済成長が予想通りに推移した場合には必要である」などと意見が分かれました。ただ多くの参加者が2019年後半の政策金利をどのように調整することが適切かまだはっきりとわからないとも発言していました。
表1:FOMC経済見通し(2018年12月時点)
2019年 | 2020年 | 2021年 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
(差異) | (差異) | (差異) | |||||
実質GDP | 今回 12月 | +2.3% | -0.2 | +2.0% | 0.0 | +1.8% | 0.0 |
前回 9月 | +2.5% | ↓ | +2.0% | - | +1.8% | - | |
失業率 | 今回 12月 | 3.5% | 0.0 | 3.6% | 0.1 | 3.8% | 0.1 |
前回 9月 | 3.5% | - | 3.5% | ↑ | 3.7% | ↑ | |
インフレ率 | 今回 12月 | +1.9% | -0.1 | +2.1% | 0.0 | +2.1% | 0.0 |
前回 9月 | +2.0% | ↓ | +2.1% | - | +2.1% | - | |
コアインフレ率 | 今回 12月 | +2.0% | -0.1 | +2.0% | -0.1 | +2.0% | -0.1 |
前回 9月 | +2.1% | ↓ | +2.1% | ↓ | +2.1% | ↓ |
保有資産の縮小終了の時期は年内で一致
長期的な金融政策の実施状況では、FRB保有資産が約4兆5,000億ドルまで膨らんだバランスシート縮小政策について議論されました。2017年10月より段階的に「適正水準」(適正水準は2兆ドル程度と市場では想定されています。)まで資産の縮小を行い、FRBからは2021年~22年頃の終了が示唆されていました。議事要旨ではバランスシート縮小政策を柔軟に進めることに賛同があり、ほぼすべての参加者が年内に縮小を終了すると予想していることがわかりました。議事要旨を受けて市場では、今後の利上げへのスタンスがはっきりせず、年内利上げの可能性も意識され、米国金利が上昇し(価格は低下)、米国株は売られましたが、その後クラリダFRB副議長が今年利上げなしのシナリオに言及すると株価は戻すなど神経質な展開となりました。2月26日には22日に公表された金融政策報告書に関するパウエルFRB議長の議会証言が開始されます。そこでの発言にも注目が集まるものと思われます。
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