金融市場NOW
継続するフランスデモと5月欧州議会選挙
2019年01月10日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
デモはマクロン政権の政策全般への抗議へと拡大
- 昨年末より続くデモは年明け後も継続、政府は「国民対話集会」開催計画を示し対話を呼びかける
- マクロン大統領への支持率が低下する中、5月に迫る欧州議会選挙で反EUを唱える国民連合に敗北すれば、欧州統合深化を目指す政権にとって痛手となり、マーケットの波乱要因にもなりえる
新年入り後も収束しないデモ
フランスで昨年11月の下旬から始まった燃料増税に反対するデモは、新年入り後も8週連続で行われています。デモの直接のきっかけは燃料増税とされていますが、国内に投資を増やすことを目的に高額資産や取引全般にかかる富裕税を廃止し、課税対象を不動産取引や不動産資産に限定したことや法人税減税などの政策が富裕層や企業を優遇し、また国鉄改革(職員優遇措置の廃止等)や労働法改正などの規制緩和が労働者を冷遇しているとの批判を浴びています。今回のデモを受けて政府は燃料増税の停止や今後富裕税の復活の検討を示唆しましたが、抗議は大統領の辞任要求など政権への不満に発展しており、地方では高速道路料金所が閉鎖されるなど市民生活への影響も危惧されています。2017年の就任時は60%を超えていた大統領支持率は、直近では30%を切る水準まで低下しています。政府は行政の在り方をめぐる「国民対話集会」を近く開く計画を示し、対話を呼びかけていますが、5月には欧州議会選挙が予定されており、支持率低下が選挙結果へ影響を及ぼす可能性があります。
表1:主要国の欧州議会議席数(現総数750議席)
国 | 議席数 | 比率 |
---|---|---|
ドイツ | 95 | 12.6% |
フランス | 74 | 9.9% |
イギリス | 73 | 9.7% |
イタリア | 73 | 9.7% |
スペイン | 54 | 7.2% |
ポーランド | 51 | 6.8% |
ルーマニア | 32 | 4.3% |
表2:欧州議会の主要会派
会派名 | 議席数 | 概要 |
---|---|---|
欧州人民党(EPP) | 218 | 最大会派で中道右派。ドイツCDU・CSU、フランス共和党、スペイン国民党などが所属。 |
欧州社会・進歩連盟(S&D) | 186 | 中道左派の第2会派。ドイツ社会民主党、イタリア民主党、イギリス労働党などが所属。 |
欧州保守改革(ECR) | 74 | 保守主義、欧州懐疑派、中道右派。イギリス保守党、ポーランド法と正義などが所属。 |
欧州自由民主連盟(ALDE) | 68 | 中道主義会派、汎欧州主義派。ドイツ自由民主党、イギリス自由民主党などが所属。 |
支持率低下は欧州議会選挙への影響も
欧州議会は欧州理事会と共にEU(欧州連合)の立法機関であり、予算などを執行する欧州委員会の委員長任命への影響力などを保持し、任期は5年で最大751議席(現議席総数は750議席。2019年選挙では英国のEU離脱を考慮し46議席を削減)で構成されており、各国に議席数が割り当てられています。各国政党は議員を欧州議会へ送ると共に、政治理念を共有する他国の政党と会派を形成しています。最大会派は200名を超える議員が属する欧州人民党(中道右派)です。同会派にはドイツ与党であるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)やフランス共和党などが属しています。欧州人民党が自国で支持率を低下させる中、ユーロ圏共通予算などの改革による欧州統合深化を目指すマクロン大統領は選挙戦での勝利で改革の主導権を握りたいところですが、自身の支持率低下は選挙へ影響するものと思われます。また、直近の世論調査では反EU・移民排斥を掲げる国民連合が与党・共和国前進の支持率を上回っています。欧州各国でも同様の主張を掲げる政党が議席を伸ばすとの世論調査もあり、今後欧州政治の不透明要因となりえます。EUの枠組み自体が揺らぐ可能性は低いとしても欧州議会選挙の動向が、今後マーケットへの波乱要因になりえることも想定されます。
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