金融市場NOW
欧州 移民問題で各国対立
2018年07月11日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
増え続ける移民。政策をめぐり国内外で対立の火種に
- 移民政策での対立から混乱していたドイツ政局は連立与党内で調整がつき、ひとまずは収束の模様。
- EU(欧州連合)首脳会議で協議された移民政策は合意に至ったものの、各国の移民に対するスタンスには相違もあり、具体策をめぐり今後混乱する可能性も。
移民政策でドイツ政局の混乱は一旦収束も増える移民・難民
ドイツのメルケル首相は移民政策で対立していた姉妹政党である地域政党キリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー内務相と合意し、同氏の辞任が回避されました。交渉の決裂が連立与党の解消に繋がり政権基盤の不安定化を懸念する声もありました。CSUが地盤とするドイツ南部のバイエルン州はオーストリアとの国境沿いに位置します。当国境より入国を図る移民の適法性などを確認の上、状況に応じて最初に入国・難民申請登録などを行った国へ送還する措置で内務相と合意しました。また、同じく連立政権を構成し、人道的な政策を基本方針とする中道左派政党である社会民主党(SPD)の動向にも注目が集まりましたが、一部政策を調整することで合意に至りました。対立の背景には、原則として移民(難民)は最初に入った国で庇護申請をしなければならないとされるダブリン規約の順守を求めたことがあるようです。ただし当規約については、EU諸国内でもEU圏外の国と国境を接するイタリアやギリシャなど、中東諸国やアフリカなどからの移民が地理的に入国しやすい国からは、受け入れの負担が重く不公平との声があがっていました。6月29日に行われたEU首脳会議においてもイタリアなどがこの不公平の是正を求めていました。2018年初から欧州各国に流入している移民はイタリア約16,000人、スペイン約17,000人、ギリシャには約13,000人と欧州全体でも約56,000人が流入しており欧州難民危機と言われた2015年を上回るペースで増加している模様です。
EU首脳会議では移民政策について合意も具体策はこれから
EU首脳会議では移民政策の抜本的な見直しを求めるイタリアが強硬な姿勢を示し、徹夜で協議が行われ、なんとか決裂を回避し合意に漕ぎ着けました。主な項目として「EU圏外に難民申請手続きのための施設を設置」、「EU圏外との国境管理を強化しトルコ方面や北アフリカ方面国境への管理予算の増加」や「アフリカへの投資を強化し経済的に発展させ、生活のためにヨーロッパへ渡る移民を抑制させる」ことなどで合意しました。ただし、今後協議される具体策については、各国のスタンスの違いもあり難航することも想定されます。厳格な移民政策を求める政党が政権入りしているハンガリーなどでは、一部移民(難民)の受け入れを拒否するなどEU諸国でも足並みの乱れが目立ってきています。また、難民申請登録済みの者や違法入国者などが各国を通過することも問題となっており、国境付近の道路の封鎖や検問の強化を検討する国も出てきています。検問の強化はモノ・人の移動の自由のメリットを生かしたEU経済の損失となりえることも想定され、今後EUがどういった具体策を打ち出すかに注目が集まります。
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