金融市場NOW
海外勢の米国証券投資15ヵ月連続買い越し
2018年05月23日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
金利上昇にも関わらず海外勢の米国債券買い越しは続く
- TICデータ(3月時点)によると、海外勢は米国証券を15ヵ月連続で買い越す。3月は株式を売り越す一方、債券を連続買い越し。米国勢は、2月まで3ヵ月連続買い越していた新興国債券を売り越す。
- 3月の中国の米国債保有額は2ヵ月連続増加(前月比)。米中貿易摩擦に絡む大量売却懸念が後退する可能性も。
5月15日に米財務省が発表した国際証券投資統計(TICデータ)によると、米中貿易摩擦の激化が懸念された3月の、海外からの米国証券投資(株式と債券の合計、債券には社債含む、以下同じ)は186億ドルの買い越しとなりました。買い越しは2017年1月から15ヵ月連続です。資産別では株式を242億ドル売り越す一方、債券を427億ドル買い越しています。米国株式は2018年1月下旬をピークに3月下旬にかけて下落基調をたどっており、持ち高を調整する動きが強まったものと思われます。債券については、米10年国債金利が年初から上昇(価格下落)基調で推移する中、3ヵ月連続で買い越しを続けています。金利上昇により債券投資の利回り面での魅力度が増したと考えられることや、当面3.0%程度が同国債金利の上限になるとの見方等が背景にあるものと思われます(グラフ1)。尚、3月の日本からの米国証券投資は2億ドルの売り越しとなっています。売り越しは2ヵ月連続ですが、金額は2月の125億ドルから大きく減少しています。債券の売り越し額が2月の109億ドルから10億ドルに減少したことが影響しています。
3月の米国からの新興国※証券投資(株式と債券の合計、債券には社債含む、以下同じ)は、30億ドルの売り越しとなりました。債券は31億ドルの売り越しとなっています。米国勢は2018年2月まで3ヵ月連続で新興国債券を買い越して来ましたが、米金利上昇による新興国から米国への資金回帰観測が強まる中で、3月はついに売り越しに転じています(グラフ2)。5月17日には一時3.12%と約11年ぶりの水準まで上昇する等、米10年国債金利は米経済の過熱懸念や原油価格の急騰等を背景に騰勢を強めています。足元では主要新興国の金利上昇や通貨(対ドル)安が進みつつありますが、米国勢の売りが活発化している可能性もあります。
TICデータによると、3月の中国の米国債保有額は1兆1,880億ドルと、前月比2ヵ月連続で増加し、2017年10月以来の高水準となりました。中国製品への追加関税を検討するトランプ政権への対抗措置として、中国が米国債の大量売却を行うとの懸念も指摘されていましたが、保有額の増加が判明したこと等を受けその懸念が後退することも考えられます。
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