金融市場NOW
英国 EU離脱交渉進展するも混沌とする国会運営
2017年12月27日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
EU離脱交渉は英国内のまとまりを欠いたまま第2段階へ
- 英国のEU離脱交渉は、2018年1月からの第2段階交渉へ進展するも、閣僚の辞任や与党議員の造反など政権基盤は不安定な状況が続く。
- 2019年3月離脱と期限が迫る中、離脱後の英国の立ち位置をめぐって各党、各派の駆け引きが激しさを増しており、最終離脱法案の成立まで混乱が予想される。
離脱交渉は第2段階へ進むも相反する立場で混沌とする国会
EU(欧州連合)からの離脱交渉を進める英国とEU加盟国は、第1段階交渉で「十分な進展があった」として2018年1月から第2段階の交渉に入る予定です。第1段階交渉では、最大の懸案事項であった離脱に伴う清算金の額についてEUの求める金額(約500億ユーロ)を支払う方向で歩み寄り、交渉は進展しました。しかし英国内は一枚岩ではなく、離脱後もEUとの通商関係はなるべく維持したい(ソフトブレグジット)派と、移民制限などを優先し通商合意の決裂も辞さない離脱を目指す(ハードブレグジット)派などに分裂しています。また両派内、閣僚内においてもそれぞれ考えが異なるグループに分かれ、一部政党は離脱協定合意後に2度目の国民投票を提案するなど混沌とした状況となっています。
下院議会は13日、EU離脱法案についてEUとの最終合意に議会の採決が必要とする法案を可決しました。法案はEU離脱反対の議員やソフトブレグジット派の議員が支持しており、2019年3月の離脱へと時間が刻々と迫る中、交渉の主導権を握り速やかに最終合意を行って離脱へと向かいたい政府にとっては打撃となりそうです。
最大の争点は通商協定の合意か
法案可決の背景には、ビジネス界の意向も尊重し、現状の通商関係を極力維持する方向へと政府のスタンスを向けさせたい意向があるようです。交渉の行方を占う意味では過去にEUと自由貿易協定を結んだ各国の例が参考となりそうです。一部の議員はカナダ型をベースとする協定を提唱していますが、多くのソフトブレグジット派はEUの自由貿易エリア内に留まり、『EUに属していないがEUに最も近い国』ノルウェー型の協定を望んでいると見られます。しかし「移民制限」や「主権回復」などで妥協することになればハードブレグジット派からの反発も予想され、不祥事により閣僚辞任が続く中、政権基盤の弱いメイ政権の打倒運動に発展しかねません。離脱後の移行期間に関する交渉も含め離脱まで残された期間は15ヵ月程度です。その間紆余曲折が予想されることから、リスクとしてマーケットへの影響も注視していく必要がありそうです。
表1:離脱への主な日程(12月25日時点での予定)
予定されている日程 | 主な内容 |
---|---|
2018年1月~ |
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2018年3月~ |
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2018年10月~11月頃 |
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2019年3月29日~ |
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2020年12月末 |
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表2:各国のEUとの関係と通商協定の内容
国 | EUとの関係・主な通商関係 |
---|---|
EU加盟国 |
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ノルウェー |
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カナダ |
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トルコ |
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WTO加盟国 |
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金融市場動向
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