金融市場NOW
欧州の景気回復と政治リスク
2017年11月30日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ドイツの政局混乱が意識されるも欧州景気は順調に回復
- ドイツ与党キリスト教民主同盟(CDU)・キリスト教社会同盟(CSU)と自由民主党(FDP)・緑の党による連立政権交渉が難航。欧州の政治リスクが意識されマーケットのリスク要因との見方も。
- 欧州景気は順調に回復しており、ユーロ圏の経済見通しは上方修正されている。良好な景気動向を受けてユーロは対ドルで堅調に推移することが想定される。
9月の総選挙で第1党を維持したドイツのメルケル首相率いる与党CDU・CSU主体の3党による連立政権樹立の協議が、難民問題など政策面での対立などにより難航しています。メルケル首相は、過半数の議席を持たない少数与党政権樹立、再選挙もしくは他の連立先を探すかの選択を迫られています。与党はシュタインマイヤー大統領の仲介を受け、これまで連立政権を構成してきた第2党の社会民主党(SPD)との再度の連立を模索しています。しかし、SPDは先の選挙で大きく議席を減らし、党勢の回復を目指すため連立政権からの離脱を表明しています。交渉が難航し、政治空白が長期化した場合には、英国のEU(欧州連合)離脱問題などを抱えていることもあり、欧州マーケットの波乱要因になるとの見方もあります。
政治が混乱する中でも、欧州経済の回復は続いています。先週発表されたユーロ圏の製造業とサービス業の経済活動を示す11月の購買担当者指数(速報値)は6年7ヵ月ぶりの高水準に達し、11月のユーロ圏消費者信頼感指数(速報値)も+0.1と前月の-1.1から改善し、約17年ぶりの高水準に達しました。また11月のドイツ企業景況感指数は東西ドイツ統治後の最高を更新し、業種別DI(景気動向指数)では、製造業と卸売業の加速が確認されました。10月27日に欧州中央銀行(ECB)が発表したユーロ圏の経済見通しは2017年の実質経済成長率の見通しが前年比+2.2%と、前回5月から0.3%上方修正されました(表1)。
対ドルユーロ相場はドイツの連立政権樹立の初回交渉決裂報道を受けて下落したものの、その後は回復傾向となっています。単純に比較はできないものの、現在のユーロの水準は2014年のクリミア危機による大幅な下落の前の水準と比較すると低い水準にあります(グラフ1)。積み上がったユーロ買いポジションの動向(グラフ1)、ドイツの政局や今後の欧州各国選挙などの政治イベントを注視する必要がありますが、景気回復による良好な経済指標などからユーロは対ドルで比較的堅調に推移するものと思われます。
表1:ECB経済見通し
2017年 | 2018年 | 2019年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
10月見通し | 対前回変化※ | 10月見通し | 対前回変化※ | 10月見通し | 対前回変化※ | |
消費者物価指数(対前年比) | 1.5% | 0.0 | 1.4% | 0.0 | 1.6% | 0.0 |
コア消費者物価指数(対前年比) | 1.1% | 0.0 | 1.4% | +0.1 | 1.5% | 0.0 |
実質GDP(対前年比) | 2.2% | +0.3 | 1.9% | +0.1 | 1.7% | +0.1 |
失業率 | 9.1% | -0.1 | 8.6% | -0.2 | 8.2% | -0.2 |
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