金融市場NOW
国内銀行の不動産業向け貸出動向
2017年11月29日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
2017年7~9月期の伸びは前期に比べて鈍化するも依然高水準
- 日本銀行の2017年9月の「貸出先別貸出金」によると、国内銀行の総貸出は485.1兆円となった。
- 国土交通省の不動産投資市場拡大目標を背景に、J-REITが国内銀行の主要な融資先となる可能性も。
日本銀行が11月16日に発表した2017年9月の「貸出先別貸出金」によると、国内銀行(3勘定:銀行、信託、海外店)の総貸出は前年同期比(以下、同様)3.3%増の485.1兆円となりました。
主な業種別で見ると、製造業向けは同1.3%増の56.1兆円、アパートローンを含む個人による貸家業向けは同3.5%増の23.0兆円となりました。不動産業向けの貸出残高は同5.9%増の73兆9,682億円となり、1970年3月末以降で過去最高となっています。日本銀行のマイナス金利政策による住宅ローン金利の低下や、地価上昇による不動産投資信託(REIT)向け融資の増加等を背景に残高は増えてはいるものの、4四半期連続で増加ペースは鈍化しており不動産関連融資に一服感がみられ始めているようです(グラフ1)。総貸出残高に占める割合は、不動産業向けが15.2%、個人向けは28.4%となっており、特定の貸出先が総貸出の拡大をけん引する傾向は継続しているようです。昨今の不動産業向け貸出には、相続税の節税対策のひとつとして急増してきた側面もあると言われていますが、建設ラッシュにより貸家市場の需給は悪化しています。また、金融機関の貸出残高に占める不動産業向け貸出の割合も過去最高水準となっていることから今後は比率を高めにくく、新たな融資先の開拓が求められそうです。
国土交通省は2020年を目途に、不動産投資の市場規模を現状の約15兆円から30兆円程度に倍増させる目標を打ち出しています。不動産業向けのうち、J-REIT向けの貸出は引き続き高水準で推移していくものと思われます(グラフ2)。
金融市場動向
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